Streptomyces avermitilisのゲノム解析
・はじめに
 土壌に広く生息する放線菌は原核細胞生物でありながらカビと似たような形態分化が観察される興味ある微生物である。 一方、放線菌の最も興味ある性状は本菌、特にStreptomyces属の菌種が医薬品として重要な多くの抗生物質ならびに生理活性物質を生産することであり、 産業上極めて重要な微生物のうちの一つである。1997年から英国Sanger研究所で進行していたStreptomyces coelicolor A3(2) (分類学的にはS. lividans 1326と供にS. violaceoruberに分類される)のゲノム解析が2002年に完了するとともに、 2003年、我々が2000年より行ってきたS. avermitilisのゲノム解析が完了した。
 このように2種のStreptomyces属のゲノムが明らかになり、形態分化および抗生物質生産についてのポストゲノム研究がこれから展開されるものと期待される。 また、Streptomyces属のゲノムは原核細胞生物の中でも巨大であり、なおかつ線状構造を有している。 このようにゲノムの形状および巨大化に関する生物学的な意義を考える上でも重要なモデル微生物である。
ゲノム解析が完了した放線菌S. coelicolor A3(2)(左)とS. avermitilis (右) の寒天培地上での生育
  1. ゲノム解析法およびゲノムの特徴
  2. 2次代謝の多様性
  3. ポストゲノム解析
  4. KEGG pathway at Chem. Inst. Kyoto Univ.
  5. ゲノムの詳細な情報はここを参照してください(公式HP)。
・付録
 Streptomyces属には極めて多くの種が存在する。それらの16SrRNA遺伝子の配列をもとにした分類を行うといくつかのclusterに分けることができる (図では5つに分けることができる)。これらの中でもエバーメクチン生産菌Streptomyces avermitilisを含むclusterには医薬品生産菌として有用な菌種 が見出されることは興味深い(抗結核薬streptomycin、抗菌薬lincomycin, clavulanic acid, chloramphenicol、動物薬hygromycin Bや除草薬bialaphos)。
16S rRNA遺伝子配列によるActinobacteriaの系統樹