ポストゲノム解析

・シトクロムP450の多様性

 太古の地球上には還元型の大気が存在していたが、その後シアノバクテリアなどによって大気に酸素が蓄積した。 酸素はエネルギー獲得には有利な分子であることから、その後好気性の生物が出現してきたと考えられる。 シトクロムは鉄イオンがヘムに配位した酵素分子であり、その中でもとりわけシトクロムP450は我々の肝臓での薬物代謝酵素として近年注目されている。 一般に、微生物のゲノムにはシトクロムP450の遺伝子は少なく、大腸菌などでは存在しない。 また、微生物由来のシトクロムP450は真核細胞生物の細胞膜結合型のシトクロムP450とは異なり、可溶性の酵素として細胞質に見出される。 Streptomyces属の菌株およびこの菌群が属するActinobacteriaは多数のシトクロムP450を保有することが、近年のゲノム解析から明かとなった。

生物におけるシトクロムP450の保有数


S. avermitilisのゲノム解析から本菌のゲノムには33種のシトクロムP450が存在することが明かとなり、 これらのシトクロムP450の網羅的な解析は酸素添加酵素の起源をあるいはその役割を考える上で極めて重要である。
S. avermitilisの染色体上のシトクロムP450の分布

・2次代謝産物のメタボローム

 Streptomyces avermitilisの染色体上の2次代謝産物生合成遺伝子群から生産されうる化合物を網羅的に解析し、 それら生合成遺伝子群の発現調節ならび生物にとっての2次代謝産物生産の意義を考えていきたい。

S. avermitilisの2次代謝産物の構造および一部推定構造

緑色で示した構造の化合物はゲノム解析以前に生産およびそれらの構造が解析されたもの。赤色で示した化合物はゲノム解析の後、 遺伝子情報から生産が予測され、生産条件を検討しそれらの構造が明かとなったもの。
 注)個々の化合物の生産条件はそれぞれ異なる。

・ゲノム情報からの生産物の構造予測

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